在日韓国・朝鮮人高齢者の年金訴訟
2007年2月23日
第一審(京都地裁)判決要旨の簡単な解説と批判
(この要旨は支える会メンバーが作成したものです)
●……解説 ★……批判
■ 国際人権規約に違反していない
A規約は、自動執行力は持たない。裁判規範性もない。
・・・平成元年3月2日最高裁判決 「政治的責任の宣明にすぎない」
●つまり、A規約はただの「目標」の「宣言」で、 日本の中の「法律」として使えるようなものではないから、関係ないーということです。
★が、A規約は法律として使える性質のものだし、特に2条2項の差別禁止事項はすぐに実行するべきものです。
B規約は、自動執行力はある。裁判規範性もある。国籍も26条の「他の地位」にあたるから、国籍を理由とする差別は許されない。
ただし、差異を全てなくして全て同じに扱うことを求めているのではなく、異なる扱いも一定の限度で許容している。
●B規約は、法律として使えるし、国籍差別はダメとも書いてある。
でも、今すぐ全部同じ扱いにするのではなく、今はちょっと扱いに差があってもいいとも書いてある。・・・だから、差があっても許されるーということです。
★今すぐに全ての差別を完全になくして、全てを平等にするのは現実的には無理です。だからなくす方向で進めていく過程で、すぐになくせない差がまだあること自体はしかたがありません。
でも、それは差別をなくす努力を最大限にした上で、なおかつ最小限の差がまだ残るのは仕方がないということであって、国や判決が言うように、最初からなくす努力もしないままに「多少の差別は許されているから、これくらいは違法じゃない」というのとは、全く意味が違います。
そして、社会保障制度については 立法府に裁量権がある。
●福祉の制度は、国が自由に決める権利があるということ
★もし、国に「裁量権=自由に決める権利」があるとしても、それはどんな内容でも許される、差別的な形で決めてもかまわないということではありません。そのことの意味が取り違えられています。
外国人については、社会保障の責任はまず、その者らの本国にある。
★在日韓国・朝鮮人が何故日本で暮らさざるを得なくなったのか・・・という歴史的経過を 全く無視して「外国人一般」でしか述べていません。
また、「自国民」と「外国人」の区別に固執しているのは、日本くらいです。外国で暮らす日本人はその国の社会保障を受けています。
だから、『限られた財源の下で福祉的給付を行なうに際し、在留外国人に比して日本国民を優先的に取り扱うことを立法府の裁量の範囲内として許容していると解される』(『』は原文通り)
●障害者訴訟の判決でも使われた、この言葉は、今回何度も繰り返し使われています。
『日本国民優先が当たり前』・・・何故当たり前なのか?その差はそのままでいいのか? 何の説明もなく、当然の論理として繰り返されます。
★国際人権規約も難民条約も、「外国人」と「自国民」を区別しないで平等に扱うことを求めています。国際社会では「自国民も外国人も平等に扱うことが当たり前」なのです。人権を守るべき裁判所が平気で「自国民優先が当たり前」などと言っている恥ずかしい国は日本くらいです。
また、「限られた財源」と言いますが、国民年金の財源は今や多くの在日外国人が加入して、在日外国人によっても支えられています。国庫からも負担されていますが、それこそずっと前から在日外国人は税金などで国庫を共に支えてきています。それなのに、在日外国人だけが閉め出されるのは理屈にあいません。
在日韓国・朝鮮人の歴史的経緯
・ 社会保障は社会構成員に対して実施されるべき面はあるが、それがすぐに在留外国人も日本国民と同一の社会保障を受ける権利を有していることにはならない。
・ 在日韓国・朝鮮人が本国から何の救済も受けていないとしても、それがすぐに日本が在日韓国・朝鮮人に対して日本国民と同一の社会保障を与える法的義務があるという根拠にならない。
・ 在日韓国・朝鮮人が日本国籍を喪失したこと自体が無効とは言えないから、日本国民と同一の社会保障を与える法的義務があるという根拠にならない。
・ また、税金を払っているとしても、そのことが日本国民と同一の社会保障を与える法的義務にはならない。
・ 昭和60年改正まで国民年金から除外され、任意加入もできなかったとしても、それがすぐに日本国民と同一の社会保障を与える根拠にはならない。
●話が全然かみ合ってません。
★一番大切な、在日韓国・朝鮮人が何故日本で暮らさざるを得なくなったのか・・・については、完全に無視しています。日本の植民地政策のために、日本で暮らさざるを得なくなったのであり、そこには日本の責任が大きくあります。その点を完全に無視した上で、私たちの主張を捻じ曲げて否定しています。
経過措置を作るか作らないかは裁量の範囲内。
・ 国籍条項は国際人権規約、憲法に違反していないから、それを是正する必要はない。
・ 難民条約批准にあわせた改正であり、在日外国人に経過措置を作らなかったとしても、立法裁量からの逸脱ではない。
・ 『在留外国人に比して日本国民を優先的に取り扱うことは締約国の裁量事項』だから、日本国民には経過措置を作り、在日外国人には経過措置を作らないのも、同じ裁量の範囲内。
●上記と同じ論理で、差別も裁量の範囲内・・・でかたづけています。
★裁量の範囲内だから差別も許されるなどというデタラメな内容の判決には唖然とさせられます。
故に国際人権規約には違反しない。
■ 憲法に違反しない
憲法の基本的人権の保障は、日本国民だけではなく、在留外国人にも及ぶもの。 それは14条(平等原則)も同じ。
ただし、14条は「絶対的平等」ではなく、『合理的理由のない差別を禁止する趣旨のもの』であり、合理的根拠に基づく区別は許される。
国民年金は一部国庫負担であるから、立法府が広範な裁量権をもっている。
外国人の社会保障の責任はまずその本国にあるから、『その限られた財源の下で福祉的給付を行なうにあたり、日本国民を在留外国人より優先的に扱うことも許される』
故に外国人を除外したことは憲法に違反しない。
経過措置を作らなかったことも同じ理由で違反にならない。
●国際人権規約についてと同じ内容
(1)今すぐ全部同じにしろとは書いてない。だから、差別があっても許される。
(2)社会福祉は国が決める権利があるのだから、差別があっても許される。
(3)外国人の社会保障は本国の責任
(4) 自国民優先が当たり前 ・・・だから、違反にならない。問題はない。
★これらも上記と同じ間違いをおかしています。
■ 国際慣習法に違反しない
世界人権宣言は国連の考えを表明したものに過ぎず、法的拘束力を持つものではない。 故に国籍条項が国際人権宣言に違反すると言えない。
■ 国家賠償法に違反しない
国籍条項も、経過措置を作らなかったことも、国際人権規約にも憲法にも違反していないから、立法不作為にもならない。
●判決文の内容は 全部、国側の主張のままです!! 国の準備書面、最高裁判決などから、そのまま文章を持ってきて つなぎ合わせただけのものでしかありません!
★原告らの声をどう聞いていたのでしょうか?! オモニ・ハルモニたちの胸に迫る言葉を聞いて、何故こんな血の通わない判決文が書けるのでしょう?
*文責:事務局・N
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